複数のプランを組み合わせる公的保険「メディケア」
アメリカの公的医療保険「メディケア」は、65歳以上の高齢者や特定の障害者を対象とした制度であり、入院を補償するパートA、外来診療のパートB、処方薬のパートDの3つに分かれています。パートA(入院)とパートB(外来診療)の組み合わせが基本で、これは「オリジナル・メディケア」と呼ばれています。これにパートD(処方薬)を加えた組み合わせとともに、これらが純然たる公的保険の2形態です。
また、民間保険会社が公的資金を受けて提供している「メディケア・アドバンテージ(パートC)」は、A・B・Dを一括で提供し、視力・歯科などの追加補償も含まれる包括型プランです。
メディケア加入者は、自身の健康状態や経済状況に応じてプランを選択しなければなりません。

公的保険に民間保険を組み合わせるケース
メディケアに加入していても、すべての医療費がカバーされるわけではありません。たとえば「オリジナル・メディケア」では20%程度の自己負担が発生するため、それを補う目的で民間保険「メディギャップ」にも加入するという選択肢もあります。
また、メディケアに加入しながら、退職後も企業が提供する健康保険を継続できる場合や、退職者向けの団体保険に加入するケースもあります。これらの民間保険は、補完的にメディケアでは補償されない歯科、眼科、長期介護などの分野をカバーする役割を果たします。
つまり、公的保険で補償されない部分を民間保険で補完するという形態です。
あるいは、公的保険であるメディケアとメディケイドの両方に資格を有する場合もあります。高齢者で、かつ所得が低い場合には、州が提供する「メディケイド」と併用することで、医療費の負担を大幅に軽減することも可能です。

民間保険に民間保険を組み合わせるケース
65歳未満の現役世代では、雇用主が提供するグループ保険が主流ですが、フリーランスや自営業者の場合、政府が運営する保険選択サイト(保険マーケットプレイス)を通じて個人保険に加入することもあります。これは、所得や家族構成に応じて補助金を受けながら保険を選択できる仕組みです。
これらの保険には、HMO(指定医療機関のみ利用可能)やPPO(自由度が高いが保険料も高め)などのタイプがあり、補償内容や自己負担額は大きく異なります。
執筆者プロフィール 伊藤 ゆみ データコンサルティング部部長、データサイエンティスト。統計学、社会調査法、多変量解析、機械学習、自然言語処理を専門とし、情報処理分野において30年以上にわたり実務に携わる。広告業界でキャリアをスタートし、総合広告代理店、大学研究機関、金融機関、大手SIer、テレビ放送会社を経て、2024年4月より現職。データ分析、AI導入支援、DX推進に関するコンサルティングに従事。東京都出身。
