2. 米国で医療サービスを受ける際の流れ

米国で医療サービスを受ける際の流れ

 アメリカで医療サービスを受ける際、患者は一般的に次のような流れをたどります。
 まず、医療機関を受診する前に、保険会社や医療機関に対して費用の見積もりを請求することが推奨されます。これは、医療費が高額かつ予測しづらいアメリカの制度において、自己負担額を事前に把握するために重要です。
 次に、実際に診察や治療を受けた後、保険会社が医療機関からの請求を処理し、患者には「Explanation of Benefits(EOB)」と呼ばれる支払明細書が送付されます。EOBは請求書ではなく、保険がどのように費用を処理したかを説明する文書です。
 その後、医療機関から正式な請求書が届き、患者は自己負担分を支払うことになります。
 このように、アメリカでは医療サービスの受診から支払いまでに複数のステップが存在し、患者自身がその流れを理解し、管理する必要があります。

見積書(Estimate)の重要性

 アメリカでは、医療費の透明性を高めるために、患者が事前に医療費の見積もり(Estimate)を請求できる制度が整備されています。たとえば、Medicare加入者向けには「Web Pricer」というオンラインツールが提供されており、特定の診療や処置に対する概算費用を確認することができます。
 また、2024年以降、保険会社には「Advanced Explanation of Benefits(AEOB)」の提供が義務づけられる方向で制度整備が進められており、患者が医療サービスを受ける前に、保険適用後の自己負担額をより正確に把握できるようになる見込みです。
 このような見積もりは、特に高額な処置(手術、入院、画像診断など)を受ける際に重要であり、患者が医療機関や保険会社と連携して、事前に費用を確認することが推奨されています。

医療サービスを受けた後の清算について

 医療サービスを受けた後、まず保険会社が医療機関からの請求を審査し、保険の適用範囲に基づいて支払いを行います。
 その後、患者には「Explanation of Benefits(EOB)」が送られ、診療内容、請求額、保険の支払額、そして患者の自己負担額が明記されます。EOBは請求書ではありませんが、実際の支払い額を把握するための重要な資料です。
 その後、医療機関から正式な請求書(Bill)が届き、患者はその内容に基づいて支払いを行います。支払い方法はオンライン、郵送、小切手などが一般的です。
 なお、EOBと請求書の内容に不一致がある場合は、保険会社または医療機関に問い合わせて修正を依頼することができます。こうしたプロセスは複雑であるため、患者には自主的な記録の保管と内容の照合が求められます。
 特に高額医療の場合、支払い能力や保険の補償範囲を超えるリスクもあるため、事前の見積もりと事後の確認が不可欠です。

執筆者プロフィール 伊藤 ゆみ データコンサルティング部部長、データサイエンティスト。統計学、社会調査法、多変量解析、機械学習、自然言語処理を専門とし、情報処理分野において30年以上にわたり実務に携わる。広告業界でキャリアをスタートし、総合広告代理店、大学研究機関、金融機関、大手SIer、テレビ放送会社を経て、2024年4月より現職。データ分析、AI導入支援、DX推進に関するコンサルティングに従事。東京都出身。